NARUTO・忍界大戦2
「無神論者どもに ジャシン教の存在を知らしめてやるところだったのによォ!」
(329話・コミック巻ノ36)
呪術でアスマを殺し、残りの木ノ葉の忍びを襲おうとする矢先に、尾獣封印のため呼び戻された飛段の台詞です。
宗教を戦う目的とするメンバーが、敵側にいるのはおもしろい設定です。
これは、明らかに作者の皮肉ですよ。
現実世界では、愛を説いているはずの宗教の信者同士が、戦争をしています。
遡れば、中世ヨーロッパで数々の宗教戦争がありました。
キリスト教の教義に「汝の敵を愛せよ」ってありませんでした?
それにも関わらず、カトリック教徒とプロテスタント教徒の間で、戦争が繰り返されていましたよ。
一言で「キリスト教」と言っても、宗派が幾つも分かれていて、微妙に教義が違っています。詳しい教義の差は知りませんが、少なくとも、カトリックは「マリアが主でイエスが従」、プロテスタントは「イエスが主でマリアが従」です。
同じキリスト教徒の中でさえ争いがあるわけです。ましてや、キリスト教徒とイスラム教徒の戦いは言わずもがなですね。
世界史で習いましたが、「レコンキスタ(国土回復運動)」も、カトリック教徒がイスラム教徒をイベリア半島から追い出した戦争です。
まあ、純粋に宗教教義の問題だけでは無く、土地が奪われるとか、富も絡んでもいるわけですけど。
冷静に考えれば、世界の五大宗教と呼ばれる、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンズー教、の根本思想は、すべて「愛」。どの宗教だって、殺し合いや奪い合いを奨励している教義はないんです。
今では、「イスラム教団=テロ組織」みたいに思われています。
「愛」を説く宗教が戦争やテロを起こしちゃ、矛盾の極みでしょう。
真面目なイスラム教徒の方々は、本当に迷惑をしていると思いますよ。
やっていることが「ジャシン教徒」と変らない過激な方々は、いっそ、「ジャシン教」に改宗して、「ジャシン様」を信仰したらどうでしょう?
……というわけで、この飛段というキャラは、痛烈な皮肉と批判と、宗教教団の矛盾の象徴に見えるのです。
329話には、他にも私のアンテナに引っかかった台詞があるんですが、これはいずれまた。
NARUTO―ナルト― モノクロ版 36 (ジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 岸本斉史
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