抹茶みるく日記

感想や日々の雑考のブログです。感想は作品の評価より、自分の思考を深め、得るものがあるかどうかを重視しています。

NARUTO・678話「オレノ意思ハ」

五大国すべてに神樹の根が覆って、その根に人々が蓑虫のようにぶら下がっています。
なんとも恐ろしい光景です。

サスケの須佐能乎に守られている、カカシ、ナルト、サクラ。
サクラはサスケに、外の世界はどうなっているか尋ねます。

 

サスケ:「お前がそれを知ってどうする? 今のお前にできる事は何もない」

 

サクラは何も言えません。
カカシは自分もナルトも聞いておきたいことだし、状況を知り、次の対応を分析したいとサクラは思っていると言います。

 

サスケ:「カカシ… 今のアンタもサクラと同じだ 少し黙ってろ… オレが仕切る」
ナルト:「てめエ サスケエ! チームワークだっつってんだろが!

 

カカシは今の自分では何もできないこと、サスケの左目の輪廻眼で外の状況が分析できるなら、サスケが第七班の指揮を取るべきことを認めます。
かつて”波の国任務”の12話で、カカシは再不斬に対抗できないナルト達に「ここでは戦いに加わらないことがチームワーク」だと言いました。
それと同じことですね。
サスケの言動は一見冷たいように思えますが、それが今ここではチームワークかもしれません。

ナルトは、自分よりサスケは作戦を練るのは上手いと思うが、カカシ先生やサクラちゃんより上手いとは思えないと言います。
サスケに仕切られるのが、まだ不満なようですね。ナルトらしい。

サスケはマダラの術が発動したこと、その術は強力な幻術であること、助かったのは自分達だけであることを伝えます。
限月読が発動したことを知るカカシ、ナルト、サクラ。
……ということは、皆は今、夢の中にいる。

 

ヒナタの夢→ ベンチに座ってナルトの肩にもたれかかっています。デートの最中かな。茂みには、二人の様子を心配しているネジと妹のハナビ。

 

キバの夢→ 火影になっていて、「犬の日」を決めて休日にする命令を出します。

 

シノの夢→ 巨大な昆虫に乗って空を飛んでいます。これは新種の虫だそうです。

 

チョウジの夢→ たくさんの料理を食べようとするチョウジ。隣にはたくさん食べる人が好きと言ってる女性がいます。父親のチョウザが喜んで見ています。

 

シカマルの夢→ 妻にガミガミ言われている父シカクと、赤ちゃんを抱いている紅とアスマ。二組を見て、「結婚なんてめんどくさいことはやめとく」と言っています。なぜか隣にはテマリがいて「ああ」と同意しています。

 

いのの夢→ サスケとサイが、いのを取り合って対立しています。父・いのいちは「うちの子はもてる」とご満悦。

 

リーの夢→ ネジとナルトを倒して、サクラから好きだと告白されています。

 

テンテンの夢→ ガイ先生とリーがクールなキャラに変わっていて、「もうつっこまなくていいんだ」と安心しています。ネジが「アレはアレで、つっこまなくていいのか?」と突っ込んでいます。笑える!

 

水影・メイの夢→ ついに結婚! ウエディングドレス姿のメイ。ほかの影達が正装して参列しています。結婚で先を越された綱手が渋い顔。

 

火影・綱手の夢→ 恋人のダンが火影になっていて、その隣に寄り添う綱手自来也大蛇丸と弟の縄樹がいます。自来也が「姉ちゃんには秘密だぞ」と言って、弟の縄樹にエロ本を渡そうとしています。自来也に怒鳴りつける綱手

 

風影・我愛羅の夢→ 子供の頃に戻っています。まだ小さいテマリ、カンクロウ、我愛羅。両親も揃っています。カンクロウは人形で遊んでいます。楽しそうな一家団欒の時間。そこへ夜叉丸が「お友達が遊びに来ていますよ」と、我愛羅を呼びに来ます。「オッス! 今日は何して遊ぶ?」とやって来たのはナルトです。父の四代目風影が「あまり遅くなるなよ 我愛羅」と声をかけます。「うん」と言って嬉しそうに出かける我愛羅

 

須佐能乎の中では、ナルト達がいつ外へ出られるのか、サスケに尋ねています。
サスケは月の光で幻術にはめる術なので、光が差している間は無理だと説明します。

 

光が徐々に弱まり、消えました。須佐能乎を解除します。
目の前にいたのは、オビトに取りついた黒ゼツでした。4人が無事だったので、改めて須佐能乎が光を通さなかったことを確認します。

 

ナルトは皆を幻術から覚めさせる方法を、サスケに尋ねます。

 

サスケ:「輪廻眼の幻術は 輪廻眼で処理できる… おそらくな」

 

カカシはサスケの左目が必要だと理解します。
黒ゼツは「ソウハサセナイ」と言います。

 

黒ゼツ:「後ハ オ前達ヲ処理スルダケダ」

 

マダラ:「世界の救世主たるオレがな」

 

マダラがナルト達の前に現れます。
サスケはナルトに、マダラの影の4体に囲まれているので気をつけるように注意します。
マダラはこの世の因果を断ち切ったと言います。
人々から苦しみや痛みや空しさを切り離したと。

 

ナルト:「こんなのーーー 嘘っぱちじゃねーか!!!

 

マダラ:「ナルト…… 皆の幸せの邪魔をしているのだ……お前は 余興もここまで…… オレは地獄を天国へと変えた もう理解しろ…全て終わったのだ」

 

その時、黒ゼツが後ろから、マダラの胸を手で貫きます。

 

黒ゼツ:「違ウ…マダラ オ前ハ救世主デモナク…ソシテ終ワリデモナイ」

 

状況が一変します。マダラは身動きが取れません。何が起こっているのか、マダラにもよくわかっていない様子。
黒ゼツはマダラに、何故マダラがオビトと違って、全てを利用する側だと言い切れるのか、マダラに自分だけが違うと思うはおこがましくないか、と尋ねます。

 

マダラ:「黒ゼツ… お前は何を言っている!? お前を作ったのはオレだ…! お前はオレの意思そのものなんだぞ!」
黒ゼツ:「ソコモ違ウ… オレノ意思ハーーカグヤダ」

 

意外な展開に驚くナルト達。「仲間割れか?」とカカシ。

 

サスケ:「イヤ…そうじゃない…… あいつ…今カグヤと言った…」

 

カグヤの名を知っているのは、4人の中ではナルトとサスケだけです。
671話で六道仙人が言っていたことを思い出すナルト。

 

「十尾の力を得てワシに近づき 母カグヤの力にさえ近づこうとしている」
「やがて母の力はうぬぼれを生み 人々はその力の存在を恐れる様になっていった……」

 

黒ゼツはマダラの体を乗っ取ろうとしているようです。
苦痛の声を上げるマダラ。

 

須佐能乎の中でサスケが言ったことは、冷たいように思えますが、私は精一杯のチームワークの表現だったと思います。
全員が蓑虫状態でぶらさがっている光景は、あまりにおぞましくて、サクラには酷ですし、ナルトやカカシにもショックでしょう。
世の中には知らない方がいいこともあります。

 

意外にネジが、いろいろな人の夢に登場していたのが面白かったです。
それに、それぞれの夢に突っ込み所があって面白い。

 

スピンオフ作品『ロック・リーの青春フルパワー忍伝』の絡みで見ると、テンテンの夢はまさにフルパワー忍伝の世界そのもの。
(アニメ版は『NARUTO -ナルト- SD(すごいどりょく)ロック・リーの青春フルパワー忍伝』)

 

ヒナタの夢もSDに通じるところがあります。
SDでは、ネジはヒナタの想いを叶えてあげたいという気持ちと、宗家の人間であるヒナタと結婚したらナルトは婿入りするので、あんなドジでアホな奴に日向一族を任せていいのかという葛藤がありました。それからナルトがヒナタを、女性として大切に扱ってくれるのかも心配して、ネジが女装し、ナルトにエスコートの仕方を指南するエピソードもありました。
ヒナタとナルトのデートを心配しているところは、SDでの設定を思い出して笑ってしまいました。

 

シカマルの夢は「結婚ってめんどくせー」なんですが、なぜかテマリが一緒にいるのが笑えます。シカマルの潜在意識には、テマリがいるということかな?

 

綱手の夢に大蛇丸がいたのが切なかったです。綱手にとっての自来也大蛇丸は、サクラにとってのナルトとサスケと同じです。スリーマンセルで幾多の戦闘を乗り越えて、いつしか「伝説の三忍」と呼ばれるようになった3人。子供の頃から一緒だったのですから、本当はあのまま、3人で一緒に居たかったんですね。

 

我愛羅の夢は幸せな子供時代。母親も夜叉丸もいて、親子5人で楽しく生活しています。そしてしっかり「お友達」もいます。ちびナルトが遊びに来るのがいいですね。

 

大蛇丸の夢は披露されませんでしたが、やはり子供の頃の夢ではないかと思います。
かつて自来也はナルトに、「大蛇丸が変わったのは、両親が殺されてからだ」と話していました。私が想像する大蛇丸の夢は、担当上忍の猿飛ヒルゼン先生(のちの三代目火影)と大蛇丸自来也綱手の4人で、修業をしているところで、家に帰れば両親が温かく迎えてくれる、そんな夢です。

 

しかし夢は夢。現実ではありません。
ナルトが言う通り「嘘っぱち」です。

 

603話(コミック巻ノ63)で無限月読について、白ゼツが子供のオビトに、
「本当の世の中の嫌なことを捨て、良いことばかりの夢の中に逃げちゃおうって話!」
と説明していました。今ナルト達の世界は、その通りになっています。

 

重要なテーマが見えてきます。
現実逃避すれば幸せになれるのか。
夢を叶えることが幸せで、叶わなければ不幸なのか。
さらに突き詰めると、人が生きる意味は夢を叶えることだけなのか。

 

大きなテーマですから、人によって答えは違うと思います。
私がウン十年生きてきた経験に基づいて言えるのは、
人が生きる意味は「夢を叶えるプロセスそのものにある」です。
夢は方向を指し示す道標であって、夢が叶えば嬉しいけれど、叶わなくても不幸ではない。

 

往々にして途中で夢は変わります。
始めはAを夢みて努力してきたけれど、そのプロセスで新たなことに気がついて、Bへ方向転換することがあります。私も体験しています。
夢は北極星のように方向を示しますが、むしろ大事なのは、北極星に向かって歩き続けている瞬間で、今この時を精一杯生きていることが、本当の宝なんだと思います。
そうしていると、いつの間にか夢が叶っていたり、別の道へ行って、そこでハッピーなことと出会っていたりするのです。
もっと言えば、結果よりもプロセスで得た新たな経験や気づきが、自分を成長させ、自分を豊かにし、周りの人も幸せにしていたりするのです。

 

幸せの価値基準は人によって違います。
実際に、無限月読に嵌った人々が見ている夢は、みんな違っています。
結婚に価値を持つ人、持たない人、新種の虫に価値を見出す人、様々です。

 

1人の人間の価値観を、全ての人に当てはめることは無理なことです。
しかし長門やオビトやマダラは、その無理をしています。
彼らの動機は、人々を苦しみから救うことだったと思いますが、方法が間違っているのです。結局は価値観の押しつけですから。

 

そうはいっても大なり小なり、人は価値観の押し付けをしてしまいます。
ナルトだって、ナルトと違う価値観を持つ人からみれば、押し付けがましいと思うかもしれません。
ただナルトの価値観は、多くの人が「そうありたい」と思う、普遍性を持ったものが多いだけです。
それに強制的に自分の価値観に従わせるようなことはしませんし、できません。ここが決定的に違います。

 

11人の夢を見て、もう一つ思ったことがあります。
未来に夢がある人と、過去に夢がある人がいることです。
「こうなりたい」という夢と、「こうだったらよかった」という夢だと言えるかもしれません。
過去に大きな傷や喪失感がある人は、「あの時、ああだったら」という思いを抱えていることが多いので、時間を遡ってしまうのだと思います。
大きな悲劇を経験していない人は、未来を見ていられるのでしょう。

 

年齢を重ねると、良くも悪くも人生経験が増えます。
個人的には何歳になっても、何があっても、過去に夢を求めず、未来に向かって前進する生き方を貫きたいと思いますね。
マダラは歳を取っても理想を求めて生き続けたので、その点においては、ちょっと羨ましい気もします。でも絶対にやり方はマズイです。

 

マダラがどうやって終末の谷の敗北から生き残ったのか、うちはの石碑の全容や白ゼツ、黒ゼツ、グルグル誕生の経緯など、不明な点がまだまだ多く残っています。
一つ一つ謎が明かされていくにつれて、マダラという人物の本当の姿が見えてくるのではないかと期待しています。

 

 

NARUTO―ナルト― 63 (ジャンプコミックス)

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