NARUTO・79話「日向一族」
ヒナタ:「…………… …ナルトくん…」
ナルトの方を見上げるヒナタ。
ナルト:「ヒナタ! ちょっとは言い返せってばよー!! 見てるこっちが腹立つぞ!!」
ヒナタは黙っています。
ネジは「うるさい奴だ」と、ナルトの方に視線を向けます。
(ヒナタ):……………ナルトくん… ……………ありがとう
ヒナタの表情が変わります。
ネジはヒナタの目つきが変わったのに気づきます。
ネジ:「棄権しないんだな どうなっても知らんぞ」
ヒナタの脳裏に甦る、第一の試験でのナルトの言葉。
「−−−−−オレは逃げねーぞ!! まっすぐ 自分の言葉は曲げねぇ… オレの…忍道だ!!」(43話)
(ヒナタ):私はもう…逃げたくない!」
ギ ン
白眼!!
ヒナタ:「…………ネジ兄さん………勝負です」
ヒナタの構えに驚くリー。
ネジ:「いいだろう…」
ネジも白眼を発動。
リーは「同じ日向流、構えもネジとそっくりだ」と言います。
「日向流は木ノ葉で最も強い体術流派」だと説明します。
リー:「…前に言いましたよね ”おそらく木ノ葉の下忍で最も強い男はボクのチーム内にいる”と… それがあの…………日向ネジです…!」
ネジとヒナタの体術対決。
ヒナタの攻撃が当たります。
サクラ:「入った!?」
ナルト:「いや…浅いってばよ!」
リー:「いえ…かすっただけで効きます! それが日向一族が木ノ葉名門と呼ばれる所以(ゆえん)」
ナルトとサクラは意味がわかりません。
ガイが説明します。
ガイ:「私やリーが得意とする体術…敵に骨折や外傷といった つまり外面的損傷を与える攻撃主体の戦い方を『剛拳(ごうけん)』というのに対し… 日向は敵の体内のチャクラの流れる”経絡系(けいらくけい)”にダメージを与え 内蔵…つまり内面を壊す『柔拳(じゅうけん)』を用いる一族… 見た目のハデさはないが…後でジワジワ効いてくる……」
カカシ:「ま…内蔵だけは鍛えようがないからなぁ… どんな頑強な奴でも くらったら致命傷もんだ…」
ヒナタとネジは、今のところ互角に戦っています。
(ヒナタ):私だって…
ヒナタの拳が、またネジの体に触れました。
シノ:「ヒナタが押してる…!」
(紅):………ヒナタ…
ナルト:「いいぞー! ヒナター!!」
サクラ:「”経絡系”を攻撃だなんて…何者なのあの人たち……」
ナルトは「ケイラクケイ」がわからないので、サクラに尋ねます。
「またオバカな質問が出た」と呆れるサクラ。
代わりにリーが説明します。
リー:「”経絡系”とは血液を流す血管のように全身に広がっている…チャクラを体の隅々まで行き渡らせる管の束のようなものです…!」
ナルト:「なんだ…チャクラの通り道みたいなもんか…」
リー:「ハイ… それに”経絡系”は 体内のチャクラを練り込む内蔵と密接にからみ合ってます だからその”経絡系”を攻撃されると……内蔵にもダメージを受けてしまうんです!!」
詳しい説明にナルトは感心しています。
ネジをじっと見つめるリー。
ガイは、リーがネジの能力に詳しい理由を知っています。それはネジこそが、リーにとって最大の宿敵だから……。
このチームにも、ナルトとサスケのような2人がいます。
サクラは何故そんなことができるのか、疑問を持ちます。
経絡系は体の中にあって目に見えません。それをどうやって攻撃するのか。
カカシ:「いや…あの二人の目…白眼にはそれが見えてるのよ…柔拳の攻撃は普通の攻撃と少し違う 自分のチャクラを手のチャクラ穴(けつ)から放出して 相手の体にねじこみ……敵の”経絡系”に直接ダメージを与える」
ド コ
ヒナタの拳が当たった!?
ゴホッ
しかしダメージをくらったのはヒナタ。口から血を吐きます。
ネジの拳もヒナタに当たっていました。
ネジ:「………やはりこの程度か…宗家の力は…!」
ナルト:「な…何でだってばよ!? ヒナタの攻撃だって完璧に入ったのに!!」
(ヒナタ):ま…まだ…
ヒナタ:「はっ!」
ヒナタの攻撃はネジに当たっていますが、あまり効いていません。
三代目はネジの攻撃を見て、「さすが日向家始まって以来の天才と呼ばれることだけはある」と感心しています。
ヒナタの腕を押さえるネジ。ヒナタの服の袖をめくって、腕についたたくさんのアザを見せます。
ヒナタはネジが何をしたのか察します。
ヒナタ:「!! ……ま…まさか…それじゃ…最初から…」
ネジ:「そうだ…オレの目は もはや”点穴”を見切る…」
ナルトは何が起こったのか分かりません。
カカシ:「…さっき言った経絡系上には…チャクラ穴と言われる361個のツボがある 針の穴ほどの小ささだけどな………”点穴”と言ってな…理論上そのツボを正確に突くと 相手のチャクラの流れを止めたり増幅させたり 思いのままコントロールできるとされてる…」
カカシは「点穴は写輪眼でも見切れない」と言います。
しかもいくら洞察眼が使えるとはいえ、戦闘中にあそこまで的確に「点穴」を突ける能力は信じがたいレベルです。
ヒナタ:「キャ!」
ネジがヒナタを突き飛ばしました。倒れるヒナタ。
ネジ:「ヒナタ様…これが変えようのない力の差だ エリートと落ちこぼれを分ける差だ これが変えようのない現実…”逃げたくない”と言った時点で アナタは後悔することになっていたんだ 今アナタは絶望しているハズだ」
ヒナタは息が上がっています。
ネジ:「……棄権しろ!」
ヒナタ:「…私は…ま……まっすぐ……自分の……言葉は曲げない…」
(ナルト):…ヒナタ
ヒナタが起き上がります。
ヒナタ:「私も…それが忍道だから…!」
実力ではネジに劣るヒナタ。
しかし自分を変えたいと思っているヒナタは、この試合を放棄しません。
人生には逃げてはならない場面があります。
ヒナタにとっては、今がその時。
日向一族の能力は、ナルト達の想像を遥かに超えたものでした。
まともに喰らえば、まず勝ち目はありません。
ネジは最初から正確にヒナタの点穴を突いて、彼女の柔拳を封じていました。
ヒナタの拳が当たっても、ネジに効いていないのはそのためです。
柔拳の威力を失っているヒナタが、ネジに勝てる見込みはありません。
ダメージを受けているのは、ヒナタの方ばかりです。
ネジは試合に勝つこと以上に、宗家の人間を徹底的に貶めたいように見えます。
精神的にもヒナタを追い詰めています。
ヒナタは自信がなくて劣等感に苛まれている自分を、何とかして変えたいと思っています。
そのきっかけになったのは、ナルトの存在です。
里の大人達から忌み嫌われて、バイ菌のように扱われても頑張るナルトの姿を、ヒナタは幼い頃から見てきました。そして自分もそうなりたいと思ってきました。
ナルトが第一の試験を突破したこと、第二の試験も合格し、第三の試験の予選でキバに勝ったこと、それらの全てがヒナタにとっては、「自分もできるかもしれない」「自分もそうなりたい」と思わせる源になっています。
強敵ネジを相手に、ヒナタに闘う力を与えているのは、ナルトがこれまで示してきた行動の数々です。
ネジとヒナタは、それぞれ違う目的で闘っています。
ネジは決められた運命に逆らえないという憤りを、宗家の人間にぶつけて「参った」と言わせることで、少しでも鬱憤を晴らしたい。それは、彼の運命に対するささやかな抵抗でもある。
ヒナタは自信のない自分を変えて、自分にも価値があるのだと思いたい。
ネジは「エリートと落ちこぼれ」と言いますが、それは「宗家と分家」を違う言葉に置き換えただけです。
「分家に生れた自分の運命は変えられない」という憤りを、別の言葉で他人にぶつけている。
最早この試合は、中忍になるための試験ではなくなっています。
(79話は、コミック巻ノ9に収録されています)
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