抹茶みるく日記

感想や日々の雑考のブログです。感想は作品の評価より、自分の思考を深め、得るものがあるかどうかを重視しています。

NARUTO・686話「残せし者と継ぎし者」

今話はジャンプの巻頭カラーになっています。
2年ぶりに劇場版が作成されるそうです。タイトルは「THE LAST -NARUTO THE MOVIE-」。
ナルト映画が終了に思えますが、実はよく読むと、何が「THE LAST」なのか明示されていません。
作者の描いた、大人びたナルトのラフ画が載っています。体つきが大きくなっていて、髪を短く刈り込み、ナルト特有のヒゲ状の筋がなければ、オビトに似ています。
「ついに始動−!! NARUTO新時代プロジェクト」の記載もあり、第三部が始まるようにも受け取れます。
第一部「NARUTO・少年篇」→外伝「カカシのボーイズライフ」→第二部「NARUTO・青年篇」→第三部「NARUTO・成人篇」になる可能性もありますね。

 

さて686話は、六道仙人と歴代火影達の会話から始まります。
六道仙人と穢土転生の歴代火影達は死者なので、血の気がない顔が描かれていますね。
生きる死体と言うとグロテスクですが、穢土転生はそういう術ですもんね。

 

六道仙人が、歴代火影達に何か策を授けたようです。具体的な中身は、ここでは省かれています。

 

扉間:「……助言を頂けるなら もっと早くにしてほしかったですね」

 

冷静な扉間らしいツッコミです。
この人は誰に対しても、一環した態度を取っています。相手が六道仙人であっても態度を変えないのは、彼の長所とも言えます。人によって態度を変える人は、信用できません。

 

六道仙人の説明によると、十尾の陣中力になったマダラの体の一部(切り落とされた下半身)には、六道仙人が精神世界ではなく、現実世界に姿を現せるために必要なチャクラが揃っているからだそうです。

 

ミナト:「…で…アナタが先ほど言われた術の事ですが… 具体的にはどう様にするのですか!?」
六道仙人:「術の印はワシがやる ただこの術には膨大なチャクラがいる ワシには今そのチャクラは無い…渡してしまった」

 

ナルトとサスケに力を分け与えたことですね。
六道仙人は時間が無いので、自分の言うとおりにするように、歴代火影達に伝えます。

 

場面は変わって、氷の世界
影分身ナルト達に、次々に灰骨を突き刺して攻撃するカグヤ。
黒ゼツは背中に求道玉を持っているナルトを、他のナルトがガードしているのを見て、求道玉を持っているのが本体だと確信します。

 

灰骨でどんどん消えていく影分身達。

 

同じ空間にいるカカシは、付け入る隙すらなく、ただ見守るしかありません。
サクラもオビトも必死でサスケを救出しに行っているのに、何もできない自分を責め続けるカカシ。

 

ナルト:「まだまだァ−!! ぜってー負ける訳にはいかねーんだ!!!

(カカシ):ナルトが頑張ってる時に 何を感傷に浸ってるんだ…だからダメなんだ…! 今のオレでも…まだ出来る事はあるハズだ!」

 

始球空間からサスケを連れて、オビト達が戻ってきました。神威を使えるだけのチャクラが残っていたんでしょうかね。
求道玉を持ったナルトが、サスケに気づいて振り向いた隙に、カグヤが髪の毛でナルトを拘束して、灰骨を突き刺します。
ボロボロに崩れていくナルト。

 

カカシ、サスケ、オビト、サクラ、全員の顔がこわばります。

 

ところがこれも影分身でした。
影分身に求道玉を持たせていたのです。子供の頃から、影分身を陽動に使うのは得意でしたね。
シカマルのような頭の良さではなく、イタズラっ子の発想です。

 

ナルト:「ありがとな サクラちゃん オビト!!
サクラ:「何? 大丈夫だったの!?」
オビト:「びっくりさせやがる」

 

ナルト:「サスケ! ちゃんとサクラちゃんとオビトに礼言ったか!?」
サスケ:「………敵に集中しろ」
(カカシ):ナルトは昔から意外と賢いからな

 

黒ゼツはナルトとサスケが揃ってしまったので、カグヤにチャクラを出し惜しみしている場合ではないと警告します。
「分かっている」とカグヤ。
カグヤの額の輪廻眼が発動。

 

全員、氷の世界と違う場所にいます。
皆、動きが取りづらい様子です。

 

(オビト):体が……重い…
(サクラ):この地面……体がくい込む…
(ナルト):これじゃ…浮けねェ……
(サスケ):今度は超重力の空間…… だが… 奴も同じ様に…

 

カグヤも地面に這いつくばっています。重力は彼女にも効いています。
それでも両手から灰骨を出して、ナルトとサスケを狙います。

 

サスケはまだ左目の瞳力が戻っていないようです。

 

かろうじて灰骨を避けたナルトとサスケ。
しかしカグヤは今ので調節が出来たので、次は当てられると狙いを定めます。

 

動いたのはオビトとカカシ。
動きは鈍いですが、二人とも考えることは同じです。
それは、ナルトとサスケの盾になること。

 

(カカシ&オビト):間に合え…!

 

その時二人の手を引っ張る、もう一つの手が。
ミナト班時代のように、リンがオビトとカカシの手を取って、二人を引っ張って行きます。
一瞬、子供時代の姿に戻るオビトとカカシ。二人には、リンの姿がはっきり見えています。
もしかするとリンの意識はずっと漂っていて、二人を見守っていたのかもしれませんね。

 

オビトの背後にはナルトが、カカシの背後にはサスケがいます。
カグヤが放った灰骨が、カカシとオビトに迫ります。

 

(カカシ):ありがとう……リン オレもオビトも そろそろそっちへ行くよ そしたら また3人でゆっくり話をしよう

(オビト):リン…今度はあの世で 少しオレと… 2人きりの時間を過ごそう

 

オビトが神威を発動します。

 

(オビト):カカシは邪魔だ… ここにおいていくよ

 

カカシに迫っている灰骨が、時空間へ飛ばされました。
オビトの腹に灰骨が刺さります。

 

カカシ:「オビト…! お前またオレを…!」

 

神無毘橋の洞窟でオビトに助けられたことが、カカシの頭に蘇ります。

 

オビト:「カカシ…お前はとうぶん こっちに居ろ…… 直(すぐ)に来んじゃねーぞ

 


「オビトは、やはり”うちはオビト”でした」回。

 

「ルールを守れない奴はクズだが、仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」とカカシに教えたのは彼です。
オビトはその言葉通りに、仲間を守る為に、神無毘橋の時と同じ行動を取ります。

 

私はカカシを助けたのは、罪滅ぼしのために考えてしたとは思いません。
元々オビトが持っている性質のままに、行動した結果だと思います。

 

685話でオビトが時折見せる表情が、ミナト班時代の表情によく似ていると書きました。
ちょっと困ったような、不安そうな、オビト独特の表情です。

 

元来オビトは情に厚く、涙もろいタイプ。
「カカシ外伝〜戦場のボーイズライフ〜」(239話〜244話・コミック巻ノ27)を見ると、よく目に涙が浮かんでいます。
彼が目薬を差しているのは、それを誤魔化すためかな。

 

カカシからは「泣き虫忍者」と言われていたし(242話)、
ミナト先生からは、「自制心を口にするなら、口だけじゃなく、心も強く持たないと」と言われていました。(240話)
これらはオビトの生まれ持った性質だと思います。

 

カカシとオビトがミナト先生に叱られた後、オビトは先生に「エリート一族に生まれたのに自分は落ちこぼれだ」とこぼしています。その時のオビトは自分に自信が無くて、先生につい言ってしまったのだと思います。
当時はまだ写輪眼を開眼していませんでしたし、忍としてのスキルはカカシの方が上でしたから、余計に「落ちこぼれ意識」が強かったと思います。
ところが、実際に写輪眼を開眼してみたら、時空間を操る瞳力が備わった、とんでもない能力者だったわけです。
オビトも晩熟型でした。(早熟型と晩熟型については71話73話の雑考を参照)

 

後天的な知識や経験が考え方を色々と変えていき、その人の性格を形作っていきます。
しかし人の性質は先天的なもので、基本的に変わりません。
オビトがナルトと接触することで、だんだんと生来の自分を取り戻しつつあるのは、彼の表情などの細やかな描写で表現されていました。

 

神無毘橋で写輪眼を開眼した時に、オビトは「ここは… 仲間はオレが守る!!」と言い切っています。
私はここで、それと同じ思いが根底に流れているのを感じました。

 

ただオビトが死んだら、オビトがどうしてマダラ抜きで計画を進めようとしたのか、その真相が闇の中に消えてしまいます。
別な手法で明らかにされるかもしれませんが、登場人物が隠していることは、できれば本人の口から明らかにしてもらえると嬉しいですね。

 

最後はハッピーエンドで締めくくって欲しい。
NARUTO少年マンガなのだから、私は「ご都合主義」でもかまわないと思います。
たとえば、六道仙人の術が「巨大なイザナギ」のような術で、現実を書き換えてしまってもいいんじゃないかと思うんですよね。
ネジやオビトも復活して、新しい時代を作る担い手の一員になっていいと思います。

 

オビトもたくさんの人を殺したけど、忍連合の忍達だって、皆お互いに殺し合って来たのだから、オビトのことだけ罪人扱いするのは身勝手というものです。
この戦争で何が大切なのかをそれぞれが感じ、考えて、新しい時代を作っていく意思を共有することが、大事じゃないかと思います。