NARUTO・687話「お前は必ず」
神無毘橋では、オビトは咄嗟にカカシを投げ飛ばして、カカシを落ちてきた岩から救い、自分は逃げ遅れて岩の下敷きになってしまいます。
その時と同じく、オビトはカカシを助け、自分は灰骨を避けることが出来ませんでした。
カカシはオビトと同様に、自分が盾になって次の世代のナルトとサスケを助けようと覚悟を決めていたので、この展開はカカシにとっては想定外。
カカシ:「お前の力はまだ 今ここで必要だ! なぜ役にも立たないオレのために…!?」
オビトの腹に刺さった灰骨がボロボロ崩れていきます。「共殺し」なので灰骨が崩れると同時にオビトの体にもヒビが入ります。
カグヤはチャクラ切れなのか、カグヤの背中の灰骨が崩れ始めています。
黒ゼツがチャクラを練り直すために、始球空間へ飛ぶよう提案します。始球空間の方が回復が早いらしい。
オビト:「そんなことより… 敵に…注意しろ…カカシ…」
オビトの言葉に、カグヤへ視線を向けるカカシ。
(オビト):…ナルト …サスケ …そしてサクラか… こいつらは今 大切な時だ …カカシ お前は新しい世代の支えとして まだ死ぬには早い
灰骨が腹に刺さったオビトの体は、背中まで崩れ始めています。
それに気がついたナルトが、回復させようとオビトの体に手を当てます。
黒ゼツはナルトに、「そんなことをしても無駄だ」と。
オビトもナルトに、「黒ゼツの言う通りだ、チャクラを無駄に使うな」と言います。
ここからは黒ゼツの独演会。
黒ゼツ:「なぜそんな奴に肩入れする? そいつは元々お前らの敵だった男だろ? まあ…かといって こちらとしても裏切られた… どっちつかずのクズだがな 敵味方双方から忌み嫌われ…悲しんでくれる仲間も肉親もいない… そいつは独り… 何も残らない… 大切な人を亡くし夢を叶えることもできず 利用されたあげく最後にウロウロと…失敗だらけの間抜けが… 無様に死ぬだけの事だ」
ナルト:「てめェ さっきから」
オビト:「…そうだな …罪人のオレにふさわしい…最後だ」
歯ぎしりするナルト。
瞳力が戻ったサスケは、瞬間移動してカグヤに接近。千鳥で攻撃を仕掛けますが、全員がカグヤに別空間に飛ばされてしまいます。
ここは始球空間。
オビトと影分身ナルトと一緒に、一度行ったことがあるサクラは、自分達がどこにいるのか気がつきます。
サスケは須佐能乎を発動。
サスケ:「ナルト 今度はオレが陽動をかける… そいつはもう助からん…こっちへ来い」
ナルトは決断ができません。
ナルトの様子をじっと見つめるサスケ。
サスケは「先に行く」と言って、ターゲットへ向かいます。
ナルト:「くそ! くそ!!」
ナルトは必死でオビトを回復させようとしますが、オビトの体は元に戻りません。
オビトはナルトに「もういい」と声をかけます。
オビト:「ありがとな…ナルト」
ナルト:「……!」
オビト:「…オレは お前と戦って 何か目が覚めた様な気がした …まるでな…お前を見ていると昔の自分を見ている様で…今の自分を後悔した だが…なによりそれが…なぜだか嬉しくもあってな… …昔ガキの頃は何度も火影になった自分を想像してよ… 興奮と不安と…あの何とも言えぬ気持ち… それを思い出させたからだろう …里があり…仲間がいて 火影のオレが居ると…今さらな そう想像するだけで心の穴が埋まっていく気がしたよ」
昔リンに、オビトが傷を隠している事を見抜かれた時のことが、オビトの脳裏に甦ります。
リン:「強がって傷を隠してもダメ ちゃんと見てんだから オビトは火影になるって私に約束した いい…私だってこの戦争を止めたいと本気で思ってるよ だからオビトのこと…側でしっかり見守るって決めたの アナタを救うことは世界を救うのと同じなんでしょ 私が…見張ってるってことが もう何も隠し事はできないよ がんばれオビト! 火影になってかっこよく世界を救うとこ見せてね! それも約束だよ」
リンはオビトの手を取ります。
リン:「行こ!」
オビトの体がボロボロと崩れていきます。
オビト:「お前にはこれから まだまだ多くの苦しみがあるだろう… だが…それでもお前は変わることなくその忍道を貫き通せ …いつかオレに言ったな まっすぐ自分の言葉は曲げない…それがオレの忍道だ …だったか?」
ナルト:「ああ…」
オビト:「ナルト… お前は…必ず火影になれ」
涙を浮かべながらナルトは答えます。
ナルト:「………ああ!!!」
オビトの体は完全に崩れ去ってしまいました。
須佐能乎でカグヤと交戦しているサスケも、オビトの死に気がつきます。
黒ゼツ:「裏切り者の虫ケラがやって死んだか!! 虫けらは虫けらでも このしつこさはゴキブリだったなっ! アハハハハ!」
ナルト:「オビトを笑うなっ!!!」
黒ゼツを睨み付けるナルト。
黒ゼツはナルトに、これ以上歯向かうと、崩れて灰になったみじめなオビトと同じになると言います。
ナルト:「……… 火影になろうとしたオビトは…オレには…… かっこよくしか見えねェーよ!!!」
ナルトが一瞬のうちにカグヤに接近し、黒ゼツがいる左腕を切り落とします。
えっ、どうやって瞬間移動したの?
一方肉体が崩れ去ったオビトは、気がつくとミナト班時代の子供の姿になっていました。
目の前にはリンが。
リン:「待ってたよ」
オビト:「…そうか…待たせてすまねェ…」
リン:「色々…道に迷ったみたいだね」
オビト:「…… ああ…ここに来るまで色々あってよ」
リンはオビトに手を差し出します。
オビトは素直に、その手を取ることが出来ません。
オビト:「……… リン… オレ… リンとの約束…」
リン:「ううん… オビトは ずっとがんばったじゃない…!」
オビト:「!!!」
リン:「ずっと…見てたんだよ」
オビトの目に涙が浮かびます。
こんな風に、よく涙を浮かべちゃう子でしたね。
リン:「行こ!」
ナルトに焦点を当てても、オビトに焦点を当てても、考えがどんどん広がってしまうので、とても1つのエントリーには書き切れません。
神無毘橋任務から約18年。
「火影になる」という夢を目指していたオビトは、色々と寄り道をして、最後はその夢に戻ってます。
でもその夢は、自分の手で叶えるのではありませんでした。
次の世代に自分の夢を託すことで、夢を実現させる道を選びます。
現実社会でも、大きな課題、例えば長い年月をかけないとできない品種改良や、新しい発明、研究などは、一世代では無理です。
実際に二世代、三世代と受け継いで、ようやく結果を出せたプロジェクトは、世の中にたくさんあります。
私が興味深く思うのは、「火影なる」ということが、NARUTO初期の頃と意味合いが変ってきている点です。
元々ナルトが火影になりたかったのは、阻害されていた自分を「里の連中に認めさせたい」という願望からでした。
ナルトの成長と深く関わるので、掘り下げると長くなるため省きますが、結論を言うと今は、「火影=世界に平和をもたらすリーダー」の位置づけになっています。
最初はオビトも「落ちこぼれの自分を認めてもらいたい」という、子供らしい願望だったと思います。
オビトが中忍になった頃に、第三次忍界大戦がありました。戦争体験によって、「戦争を終結させて平和を取り戻すリーダーとしての火影」を意識するようになったとしても、不思議ではありません。
火影というリーダーとなり、世の中のシステムを変えて、平和な世界を作る。
ナルトとオビトが目指す「火影」のイメージは、この点で重なっています。
ナルトもオビトも仲間思いで、暖かいハートを持った人物です。そしてまっすぐなところも共通しています。
ただし二人を比べると、オビトの方が明らかに涙もろくて、繊細な性質を持っているのがわかります。繊細な分、折れやすいですから、黒ゼツにとっては、マダラを通してオビトを仲間に引き入れるのは簡単だったかもしれません。
しかし元々優しくて、まっすぐな子だったオビトは、最後に火影を夢見ていた頃の自分を取り戻します。それが彼にとってはせめてもの救いでした。
本来の自分を取り戻すきっかけを与えてくれたナルトに、オビトは礼を言います。
それを見たとき、彼は救われたのだと、私は確信できました。
NARUTOでは人間がチャクラを有していて、このチャクラが、現実世界の核エネルギーのように、諸刃の剣として描かれています。
今後新たな事実が出る可能性はありますが、今のところ、カグヤが神樹の実(=チャクラ)を食べて力を得、力によって世の争いを治めたところから、忍世界が始まっていることになっています。
息子の六道仙人は母の功罪を教訓にして、チャクラを人と人とを繋ぐ力にするために「忍宗」を説くのですが、結局これは上手くいかず、チャクラは忍術を使うために利用されて、力と力がぶつかり合う、争いの絶えない世界が作られていきます。
これは黒ゼツが影で画策をしていたことが原因になっているようですが、原因はどうであれ、チャクラが平和のためではなく、争いに利用されているのは事実です。
この「チャクラ」は便利なもので、術を発動するためだけではなく、「魂」とほぼ同義に扱われたりもします。
インドラとアシュラのチャクラが、何度も転生者に寄り添っていたり、六道仙人がチャクラの状態で漂っていたり、686話では、リンがカカシとオビトの手を引いている描写もあります。
つまり肉体が滅んでも、「チャクラ」という形でこの世に留まっている、あるいは人に憑依していると言えるわけで、リンがチャクラの状態で、ずっとオビトとカカシを見守っていたとしても不思議ではないでしょう。
リンがオビトを迎えに来た「あの世とこの世の狭間」は、425話でペイン戦の時に、チャクラが0(ゼロ)になって死亡したカカシが、父のサクモと再会した所と同じでしょうね。(コミック巻ノ46)
リンは子供の頃に死亡しているので、カカシもオビトも、大人になったリンの姿は見たことがありません。二人の記憶にあるリンは、少女のまま。
リンと再会したオビトは、ミナト班時代の少年の姿になっています。
約束を守れなかったオビトは、リンの目をまっすぐに見ることが出来きません。
人を殺すことは肯定できませんが、無限月読の世界では「死んだ人間も生きていることにできる」ので、生死自体があまり意味をなしていません。オビトが人を殺すことに躊躇しなかったのは、そのせいかと思います。
夢や希望に溢れた日々があったり、絶望に苛まれた日々があったり、オビトの人生も色々あったけど、彼なりに考えて、絶望のない世界を作ろうとしたのは間違いありません。
リンはオビトの葛藤も、寄り道の中身も、全部わかった上で、丸ごとオビトを受け止めて肯定しています。
「オビトは ずっとがんばったじゃない…!」
この一言で、オビトはどれほど救われたでしょうか。
火影になれなかっただけではなく、あれこれやってしまったマズいことが多すぎて、リンに責められるか、冷たくされるか、オビトは内心ビクビクして対面していたでしょう。
オビトの苦しみや悲しみ、寄り道して色々とやってしまったマズいこと、それを後悔していること、自分の夢を取り戻してナルトに託したこと。
リンの言葉からは、彼女がそれらを全部見ていて、オビトの全てを受け入れているのが伝わってきます。
オビトがどうして孤児だったのかは未だに不明ですが、リンはオビトにとって恋愛対象以上に、母親のような存在に近いかもしれません。
自分の欠点や犯した過ちも含めて、受け入れて認めてくれる存在。
思わず涙ぐんでしまうオビトを見て、ようやく本来の自分を完全に取り戻したのだと実感しました。やっぱり繊細で泣き虫です、この子は。
さて、オビトから語って貰いたい謎解きがあるのですが、どうなるんでしょうかね。
誰かが代わりに語る展開になるのか。
「写輪眼のカカシ」がただの「カカシ」になってしまったし、神威無しで、どうやって始球空間から脱出するのか、それも気になります。
ナルトがカグヤの左腕を切り落とした時の、スピードの速さも気になりますね。
オビトの死がきっかけで、ナルトに新たな力が目覚めたのでしょうか。
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