NARUTO・世界の進化1
オオノキ:
「こいつらを見ていて 時はただ刻むだけではないと分かった……
世界は過去を重ねて ゆっくりだが成長しておる…平和へ向けてのう」
マダラ:
「世界はこれ以上成長する必要などない 無限の月読の幻術の中で眠っていればいい」
(562話 コミック・巻ノ59)
人類の歴史は、太古の時代には少人数単位でコミュニティを形成し、やがて地域単位のコミュニティとなり、そして国家へと発展しました。今は、EUやASEANなど、国家同士のゆるい連合を形成し始めています。
身近な日本の例では、明治維新があります。
明治維新で一つの日本国家になるまでは、藩単位のコミュニティで戦さをしていました。
今で言えば、都道府県の間で戦争をしていたのです。
さらに昔は、平家と源氏のように部族間の争いでした。
そんな現実の有様を、NARUTOの物語は上手く背景に組み込んでいます。
一族単位のコミュニティが、柱間とマダラの決断で、一族の連合である地域のコミュニティになりました。それが「里」です。
そのおかげで、かつて二人が望んだ、10歳にならない子供までが、前線で死ななければならない世界を変えることに成功します。
マダラが里を出る決心をしたきっかけは、扉間が自分を受け入れておらず、このままでは、うちは一族が主流から追い落とされると思ったように描かれています。これは柱間の回想なので、柱間側からの見方です。
ですから、この点は微妙で、私は本当の理由は他にあると思っています。
里抜けの真相はわからなくても、マダラ本人も望んでいた、子供たちが大きくなるまでは安心して暮らせる環境を作ったのですから、大成功といえます。
マダラが柱間の提案を受け入れたからこそ、一族単位から里単位のコミュニティに移行できたわけで、マダラが後世に残した功績はものすごく大きいのです。
人類の歴史を鑑みれば、NARUTOの世界も、時間はかかるが、次は里同士の連帯に移行して、最終的には1つの世界になるのが自然です。
それをマダラは一足飛びに、一人で成そうとしているわけですから、どう考えてもかなり無理がある。
何が彼をそこまで追い立てるのかは、今後明らかになっていくと思います。
愛情深い人だから、失敗を繰り返して少しずつ進化することに耐えられないのかもしれません。失敗を繰り返すということは、犠牲者が出るということですから。
それとも本当に絶望し切って、一気に解決しようとしているのかもしれません。
しかし、人は一足飛びに進歩しないのは明らかで、生きとし生けるものすべてがそうです。
種の進化は何千年何万年と時間をかけているし、人の成長も泣いたり笑ったりしながら、時間をかけて赤子から大人になっていく。
私は、そのプロセス自体に人の生きる証があると思うし、ナルトの生き方はまさにそれを地で行っているように思えます。
この物語では、「愛から生まれる憎しみ」もキーワードです。愛と憎しみは表裏一体で、別個に切り離すことはできません。ここから生まれる憎しみの連鎖と、どう向き合うのか。
マダラは、未来永劫、愛と憎しみから生まれる人間の性(さが)は超えられないと思っているようです。
オオノキは、次世代がそれを乗り越えていくだろうと希望を持っている。
巻ノ59にある、穢土転生されたマダラとオオノキの一連のやり取りは、未来に対する考え方の対比が見られて興味深いところです。
ぢゃ、また。
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