NARUTO・73話「敗北宣言…!?」
いのは座り込んでいます。
ナルトはサクラの様子も変だと思いますが、いのが動けないようなのでこれはチャンスだと、サクラをけしかけます。
カカシ:「あそこで心転身の術とは…やられたな」
リー:「心転身…!? …ということは今 サクラさんは………」
カカシ:「ああ…サクラの精神は 完全にいのに乗っ取られた サクラの中には今 いのがいる」
いのの狙いは、サクラに試合を放棄させること。
サクラが手を上げました。
サクラ(いの):「私…春野サクラは この試合…棄権……」
ナルト:「………ダメだぁっ!! サクラちゃん!! ここまでガンバって来たのに………サスケバカ女なんかに負けたら…女がすたるぞ−−−!!」
そんなこと言ってもムダだと、いの。
ビクッ
(いの):「何………この悪寒……」
(サクラ):「−−−−−−…ナルトのヤツ うるさいわね−…」
サクラ(いの)は急に頭を抱えて、ふらつき始めます。
(サクラ):「それにしてもそうだわ… 私がこんなヤツ相手に…」
(いの):「サクラッ!? そんなバカな…」
ハヤテ:「どうしたんですか? 棄権ですか?」
(サクラ):「棄権なんかして……… たまるもんですか−−−−−ッ!!」
サクラの中で、いのとサクラが争っています。
ハヤテもどっちなのか見極められません。
いのは自分の術が破られたことを悟ります。
いのの精神よりサクラの精神が大きくなり、精神世界でいのを両手で鷲づかみにします。
サクラの精神の額に「内なるサクラ」と書かれています。
(サクラ):「…いの…… 私の中から早く出ていかないと エライ目にあうわよ!!」
いのは「このままでは持たない」と、心転身の術を解除します。
いの:「精神が2つあるなんて…あ…あんた何者よ!?」
サクラ:「ふ…知らなかった? 女の子はタフじゃないと生き残れないのよ!!」
心転身の術にかかれば、そう簡単に侵入者を追い出せません。
術の前に力を使いすぎたので、いののチャクラが不足したせいもありますが、それ以上に効いたのは、サクラの心の中にある、ライバルのいのへの闘争心。
それがナルトの声援によって呼び覚まされて、いのを追い出したようです。
カカシ:「何てことはない…ナルトと同じ…サクラも負けん気は人一倍強かったな だが二人ともチャクラはもうほとんど残ってないはず…」
対峙する2人。
同時に動きます。
これが…最後!!!
2人の拳が、相手の顔面に炸裂!
2人とも吹っ飛ばされて、倒れてしまいます。
ハヤテ:「両者 続行不可能…ダブルノックダウンによりーーーー 予選第四回戦 通過者無し!」
アスマとカカシが、いのとサクラを引取ります。
シカマル、チョウジ、ナルト、リーが、2人を心配して駆け寄ります。
2人ともチャクラを消耗し、心身共に疲れ果てて気を失っています。
幸い医療班に治療をしてもらうほどのダメージはありません。
アスマ:「しかし…驚いたな…」
カカシ:「ああ…」
アスマ:「ナルトとサスケはともかく… あの頼りなかったサクラまでが…こんなに成長してるとは…」
カカシ:「いろいろあったけど… この中忍試験に出して良かったと………心から思ってるよ」
続いて第五回戦は、テンテン対テマリ。今度も女子対決です。
サクラの意識が戻りました。
いのも、目を覚ましています。
ガイとリーがテンテンに声援を送っています。
自分たちの試合が終わったことを知るサクラ。
サクラ:「私…負けたの…?」
いの:「フン…泣きたいのはこっちの方よー…… アンタみたいなのと…引き分けだなんてね…」
サクラ:「え?」
いのはサクラが試合で落とした額当てを渡します。
いの:「アンタも咲かせたじゃない…キレーな花………」
サクラ:「……! ……………いの…」
笑顔でサクラに額当てを渡すいの。
サクラは額当てをいつものように頭に付けます。
今まではいのの後を追いかけていたサクラでしたが、ようやく対等のライバルとして認めてもらえたようです。
いの:「だけどね…次 戦うときは気絶じゃ済まさないわよ!!」
サクラ:「……!!」
いのは「サスケくんもアンタに渡すつもりはない」と言います。
「その台詞そっくりそのままアンタに返す」とサクラ。
あ〜あ、恋のバトルは続きそうですね。
会場がざわついています。
ネジ:「テンテンの武器攻撃を完封するとは…」
リー:「そ…そんなバカな…!!」
テマリ:「つまらないな……ホントに……」
ボロボロになったテンテンの周りに、たくさんの忍具が散らばっています。
ナルト:「な…何だったばよアイツ」
カンクロウ:「オレらがこんなとこで負けるわけないじゃん」
我愛羅:「…ふん」
砂の国の実力に、三代目も驚嘆しているようです。
回数は少ないですが、「内なるサクラ」はこれまでも、描写されていました。
お腹の奥の、本音の部分のサクラなのですが、これがここで効いてくるとは。
誰もが建前と本音を使い分けて社会生活をしていますし、自分の中に様々な自分がいることを感じている人は多いと思います。
それは精神分裂病とは違い、普通のことです。
頑張りたいと思う自分と、面倒臭いと思う自分がいたりするのは、誰でも同じです。
自分を越えるというのは、臆病だったり、面倒くさがったり、嫉妬や憎しみなどのネガティブな自分に打ち勝つことを意味します。
サクラはいのに勝つことで、自分を克服しようとしています。
しかし、さすがは常にサクラをリードしていた、いの。
彼女の作戦にまんまとひっかかり、心転身の術をかけられてしまいます。
おそらくサクラは術にかかった瞬間、「もうダメだ」と思ったでしょう。
ナルトの声援が、サクラの気力を奮い立たせます。
68話でサスケが呪印に飲み込まれそうになった時、サクラとナルトの声を思い出して、気力を奮い立たせたのと同じです。
一人一人の努力と頑張りの積み重ねが無ければ、ただ声援を送っても空回りするだけです。
しかし頑張ってきた人にとっては、ギリギリのところで仲間の声援を力に変えられます。
第七班として一緒に活動してきたナルト達。3人の関係が深まっていく過程を、丁寧に積み上げています。
12歳のナルト達はアスマやカカシから見れば子供ですが、子供は大人が思っている以上に幼くはありません。
環境が人を作ります。
子供だからといって、いつまでも幼稚園生を見るように自分の子供を見ていると、子供の成長を損ねてしまいます。
発達度合いはその子によって違いますので、親や周りの大人はよく観察していなければなりませんが、少々高いハードルを与えることが必要な時が、必ずあります。
むしろそうすることが、その子の将来にとって大きな財産になることがあるのです。
カカシはイルカの反対を押し切って、中忍選抜試験の参加を決めました。
現代は過保護な親が多いので、子供が持っている力が磨かれずに、埋もれていっているように思えます。
71話の雑考で書いたように、子供の発達スピードは18歳〜20歳くらいまではバラバラです。
ナルトとヒナタは晩熟型。サスケは早熟型といえるでしょう。
上の世代では、自来也が晩熟型で、大蛇丸が早熟型でしょうかね。
NARUTOの世界で描かれているように、子供は社会の財産です。
のちにNARUTOではそれを、「玉」という言葉で表す描写が出てきます。
現実社会でも同じです。子供は社会の宝です。ある意味、自分の子であって自分の子でないところがあります。
そういう客観的な目をを持った大人が増えてくれば、モンスターペアレンツのような自己中で過保護な大人や児童虐待する大人が減って、子供達がすくすくと育つ社会になるのではないかと思ったりするのです。
(73話は、コミック巻ノ9に収録されています)
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