NARUTO・685話「ありったけの…!!」
何とかカグヤの空間に潜入できたオビト達。
しかし同行した影分身ナルトは、あっけなく倒されてしまいました。
カグヤ達は氷の世界に戻っており、今はオビトとサクラしかいません。
ボロボロに崩れた影分身ナルトを見つめるサクラ。
サクラ:「私だって…先頭を走ってるつもりでいるんです! こうなったら ナルト以上に結果を出しますよ!」
オビトはそんなサクラを横目で見つめます。
本体ナルトはどうしたんでしょうね。
オビトが神威を仕掛けた時に、本体ナルトも後を追っていたのですが、間に合わず閉め出されていました。
オビトは両目に自分の写輪眼を取り戻しているので、片眼の時の倍の速度で移動が可能になっています。
ナルトのスピードよりも、神威の方が早かった。
三人はカグヤの空間に潜り込めましたが、早速黒ゼツに気付かれてしまいます。
影分身ナルトは、自分が注意を引きつけている間に、二人に隠れるように指示します。
オビトはサクラを連れて、自分の時空間へ避難します。
ここから先は684話の通りです。
カグヤと黒ゼツが氷の世界に戻ってみると、影分身ナルト達がまだ残っています。
2人は騙されたことに気がつきます。
本体ナルトは、カグヤ達がオビト達の所へ行くことを警戒しています。
その頃、カグヤの始球空間では……
(サクラ):ありったけのチャクラをこの人に…!!
サクラの百豪の印が解放されて、オビトの体を印の模様が包んでいきます。
サクラ:「ハアアアーー!!!」
神威を発動するオビト。目から血が流れます。
なかなか空間が開きません。
オビト:「とんでもなく…遠い空間だ」
「これを一瞬で繋げるカグヤとは…いったい何者だ…!?」と、底知れぬカグヤの力をオビトは実感しています。
空間が開きましたが、そこは氷の世界の一つ前にいた溶岩の世界。
サスケを感知できません。ということは、ここにはいません。
目に痛みを感じるオビト。かなりの負担がかかっています。
イタチも瞳力を多用したときに、やはり出血していましたね。
万華鏡写輪眼にも限界があります。
サクラ:「大丈夫ですか!?」
オビト:「…次だ」
サクラ:「…………ハイ…!」
かなりオビトの息が上がっています。一つの空間を開けるだけで、相当にチャクラを消費するようです。
氷の世界では、影分身達が次々とカグヤに倒されていきます。
カグヤはお得意の空間を使った攻撃を仕掛けようとしますが、黒ゼツに止められます。
黒ゼツ:「うかつに入り口を作らない方がいいよ母さん 奴がサスケに近づく」
ナルトにサスケを感知されたら、陰陽の力で共鳴し合い、何をするか分かりません。
黒ゼツの意見に同意するカグヤ。
本体のナルトには求道玉が付いていることを、黒ゼツが見抜きます。
これでオリジナルが見分けられる。
その頃サスケは砂漠世界で、ナルトのチャクラを強く感じて、その場所を探していました。
始珠空間にいた影分身のことでしょう。
サスケ:「この辺りだと思ったがな…」
オビトの実感では始球空間と他の世界との距離は遠いようですが、サスケとナルトの陰と陽の力は強く引き合っている感じですね。これが共鳴の力でしょうか。
オビトとサクラは次の世界を探します。
今度は開いた空間から、酸性の液体が出てきました。
ここは酸の海。
サクラはオビトをかばって回避しますが、背中に酸の海水がかかってしまいます。
木ノ葉ベストが溶けていきます。
ベストを脱ぎ捨てて、さらに海水がかかった右袖を破り捨てます。
右腕は酸で火傷を負ってしまいました。
オビトが心配して声をかけます。
サクラ:「大丈夫…です…こんくらい…」
オビト:「お前は医療忍者だろ…傷を治すまで少し待つ…」
サクラもオビトもかなり疲労しています。
サクラ:「そんなのいいです…ナルトがくれたチャンスを潰す訳にはいかないもの!」
サクラはオビトの提案を断ります。
オビト:「………なぜ傷を…少しでも…」
サクラ:「チャクラは限られてるでしょ…それより次です」
サクラは自分の傷を治すために、チャクラを消費することを拒否します。
その分のチャクラはオビトに与えて、サスケを助けるために使いたいのです。
サクラもオビトも息が上がっています。2人ともだんだん限界に近づいている様子です。
オビト:「………つまずきそうなら助けたくなる……か」
サクラが百豪の印を解放し、オビトを包んでいきます。
オビト:「ああ次だ」
サクラ:「ハイ!!」
神威!!
開いた空間の先は……砂漠地帯!
人影が見えます。
サクラ:「サスケくん!!」
オビト:「ここか!」
サクラ:「サスケくん こっち!! 早く!!」
サクラの声がサスケに届きました。
しかしオビトもサクラも限界です。目に痛みが走るオビト。ふらついているサクラ。
サスケは開いた空間へ向かって、全速力で走ります。
オビト達の力は残り少ない。
空間の入り口が、だんだん閉じていきます。
(サクラ):サスケくん!!
サクラは最後の力を振り絞ります。
サクラ:「ハァーーッ!!!」
しゃーーんなろーーー!!!
閉じかけた入り口が大きくなりました。猛然と走るサスケ。
ズキン
激痛がオビトを襲います。両目が出血しています。
入り口が小さくなっていく……。
サクラ:「サスケくん!!」
とうとう閉じてしまいました。
サクラ:「………」
オビト:「くそっ…」
悔しがるオビト。
(サクラ):そんな…
サクラは力尽きて倒れていきます。
ガッ
倒れるサクラを、背後から支えたのはサスケでした。
オビト:「どうやって……?」
サスケ:「これがオレの能力だ オレと離れた空間とを一瞬で入れ替える…距離は決まっているが… おかげで届いた」
砂漠世界に、サクラが脱ぎ捨てたベストが落ちています。
サスケは自分とベストの位置を入れ替えたようです。
なるほど、これがサスケの輪廻眼の能力……。
ついにサスケを砂漠地帯から救い出した、オビトとサクラ。
ただし、まだナルトと合流できていませんので、本当の意味での救出は終わっていません。
私が印象に残ったのは、冒頭のサクラの台詞です。
「私だって…先頭を走ってるつもりでいるんです! こうなったらナルト以上に結果を出しますよ!」
第七班結成以来サクラはずっと、ナルトとサスケの背後にいる立場でした。
中忍選抜試験の最中に、ようやくサクラは自分の至らなさに気がつき、今度は2人に自分の後ろ姿を見てもらおうと、本気で自分を変える決意します。(53話、54話)
その後サスケの里抜けを止められなかったサクラは、非力な自分を変えようと綱手に弟子入りします。
明晰な頭脳と抜群のチャクラコントロールを除くと、当時のサクラは基本忍術しか使えない、並みの下忍です。
努力の末、医療忍術のスキルと、チャクラコントロールによる怪力と、百豪の術を身に付けます。
サクラは第二の試験の最中に決意したことを、紆余曲折はあっても、折れることなく貫いてきています。
ナルトの忍道「まっすぐ自分の言葉は曲げねえ」を、ヒナタもサクラも実践しているんですね。
ナルトの生き様は、多くの人に影響を与えています。
敵地に乗り込んだのに、影分身は消えてしまい、本体もいない。
昔のサクラならここで、「私…どうしたらいいの」(50話)になっていたでしょう。
でも今は違います。
冒頭の言葉はサクラの成長を感じさせる、名台詞だと思います。
里抜けして大蛇丸の所へ向かうサスケを取り戻すため、中忍になったばかりのシカマルを隊長に、ナルト、キバ、チョウジ、ネジが向かいます。
その時サクラは泣きながら、ナルトにサスケのことを頼みます。
何も出来ないサクラは、ナルト達に任せっきりでした。
時間はかかりましたが、今度はサクラ自身の手で、サスケを救出するチャンスが巡ってきたわけです。
そして、ついに結果を出します。
派手なアクションはありませんが、サクラが心身共に成長した証です。
オビトが傷の手当てをするように勧めても、サクラはそれを断っています。
限りあるチャクラはサスケを助けるためだけに使いたい、ナルトがいなくても絶対に結果を出す、そういう彼女の強い思いを感じました。
戦場でサスケと合流してからのサクラを見ていると、サクラのサスケに対する愛は、昔のようなミーハーなものではなく、もっと静かで深い愛に育っているのが伺えます。
あれほど苦労知らずで子供っぽかった彼女も、大きくなりました。
サスケが力尽きたサクラを支えた時に、2人の視線が合います。
こういう「目で語る」場面は、以前からこの2人にはあります。(56話、66話)
36話で見られるように、当時からナルトにはわからない(というか、ついていけない)、2人だけのやり取りがありました。
サクラの強い想いは、サスケに届いたと思います。
オビトが、酸で火傷したサクラに手当を先にするように勧めたのは、彼が本来持っている優しさです。
オビトが時折見せる表情が、ミナト班時代のオビトの表情に似ていると感じたのは、私だけでしょうか。
685話はアクションシーンが少ない地味な回ですが、サクラの成長ぶりと、オビトが闇落ちする以前の自分を取り戻しつつあるのが窺える、大事な回だと思います。
そしてこの救出作戦は、オビトだけでも出来ないし、サクラだけでも、ナルトだけでも出来ません。
人が繋がるからこそ、出来ることがある。
NARUTOはひたすらに、「人の繋がりが生み出す力」を描き続けています。