抹茶みるく日記

感想や日々の雑考のブログです。感想は作品の評価より、自分の思考を深め、得るものがあるかどうかを重視しています。

NARUTO・20話「英雄のいた国…!!」

ある事件がきっかけで、波の国の人間から”勇気”という言葉が失われてしまいました。

タズナはイナリの身の上に起こった出来事について語り始めます。

 

3年前、イナリは悪ガキ共に、ペットの犬を奪われてしまいます。

犬を取り返そうとしますが、悪ガキは犬を川に投げ込んで、自分で取りに行けと言います。

犬は溺れそうです。しかしイナリは泳げません。

ガタガタ震えるイナリ。悪ガキはイナリを川へ突き落とします。

犬は何とか自力で泳いで、岸へ向かっていきました。

イナリは溺れてしまいます。

 

気がつくと、イナリは岸にいました。

側に男性がいます。悪ガキ共は自分が叱っておいたといって、焼いていた魚を差し出します。

イナリにはその姿が神様のように見えました。

この男性の名はカイザ。後にイナリの義理の父親になる人です。

 

カイザは、犬に裏切られたのは、イナリの方が先に犬の信頼を失ったからだと言います。

イナリは助けてあげたかったけど、怖くて動けませんでした。勇気がなかったからだと言います。

カイザは、イナリくらいの年頃なら、誰だって怖いに決まっていると言ってくれました。

でも大事なことがある。

 

カイザ:「…男なら後悔しない生き方を選べ… 自分にとって本当に大切なものは… つらくても悲しくても…頑張って頑張って たとえ命を失うようなことがあったって この日本の両腕で守り通すんだ!!」

 

イナリは尊敬の眼差しでカイザを見つめます。

 

カイザ:「…そしたら たとえ死んだって 男が生きた証はそこに残る… 永遠に… だろ!?」

 

イナリは大きくうなずきます。

 

カイザは夢を求めて他国から来た漁師でした。

イナリは物心のつかないうちに、本当の父親を亡くしています。

それ以来、イナリは本当の親子のように、カイザに懐くようになりました。

 

ナルトはタズナの話を熱心に聞いています。

ナルトも父親を知らないので、イナリの気持ちがよくわかるようです。

 

カイザは家族の一員となり、町にとっても大切な人となります。

ある時、豪雨で川の堰が開いて、1つの地区が水没しそうになりました。

カイザは命を賭けて激流に飛び込み、堰を閉めるためにロープを掛けに行きます。

カイザの捨て身の行動で、地区は水没から救われました。

それからカイザは”英雄”と呼ばれるようになります。

 

ところが、波の国に来たガトーの手で、カイザは公開処刑されてしまいます。

 

イナリ:「ボクを…国の人を…2本の腕で守るって… 守るって言ったじゃないか……!……父ちゃんのうそつきーーーーーーー!!」

 

それ以来、イナリもツナミも、みんなが変わってしまったというのです。

 

話を聞いていたナルトは、これまでのイナリの言動を思い出していました。

ナルトは椅子から立ち上がりますが、修業の疲れで転んでしまいます。

カカシが、チャクラの練りすぎで、これ以上動くと死ぬぞと警告します。

 

ナルト:「証明してやる… このオレが… この世に英雄がいるってことを 証明してやる!!

 

ナルトは立ち上がって、部屋を出て行きます。

 

活気のない人々やイナリの言動の理由と背景が、明らかになりました。

ナルトが人情の機微を解する、情感豊かな少年であることがわかる話です。

イナリが本当の父親を知らないこと、新しい父親ができて幸せだったこと、その幸せを失ってしまったこと、これらによって、どれだけイナリが孤独で悲しい思いをしてきたのか、ナルトは痛いほどわかっています。

 

1話でイルカが言った、

 

「あいつはもう 人の心の苦しみを知っている……」

 

この台詞は、ナルトという人物を端的に表しています。

 

ナルトは九尾を封印されているために、里の大人達から阻害されてきました。

幼い子供には残酷過ぎる状況です。

しかしその逆境が、ナルトを人の痛みを察することが出来る人間に育てています。

虐げられた人の気持ち。孤独を抱えた人の気持ち。悲しみを抱えた人の気持ち。

12歳にして、ナルトはそれらのすべてを体験しています。

イルカ先生に認められて、孤独な世界から脱出したナルトに取って、今は、人の痛みを感じられることが強みになっています。

そして逆境を乗り越えた経験が、彼に自信を持たせています。

逆境を肥やしにして、ナルトは確実に成長しています。

心が折れているイナリに対して、今ナルトは自分でできることをしようとしています。

 

言葉ではなく行動で示すのが、ナルトのやり方です。

ナルトの行動原理と行動パターンは、物語の最も重要なポイントです。

ここを見落とさないで読んでいくと、NARUTOをより深く、よりおもしろく読めると思います。

 

そして、ナルトの中の九尾が、ナルトの行動をずっと見続けていたことが、物語の重要なキーにもなっています。

まだまだ先のお話ですが……。

 

(20話は、コミック巻ノ3に収録されています)

 

NARUTO (巻ノ3) (ジャンプ・コミックス)

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